「寒いよう・・・・・・」
夜、マゼンダが呟く。
確かに今夜は寒い。
昨日のテレビの天気予報だとそろそろ冷え込む、といっていたがまさか今日からだったとは・・・・・
激しくクロウは後悔した。
11月下旬だったからまぁいいか、と思って暖房器具の購入を後回しにしていたのだ。
そんでもって、この有様である。
「本当に何かないの?クロウ?」
マゼンダが不満そうに呟く。
これで何度目だよ、とソファで寝そべっているクロウは思う。
おそらく暖房器具はないの、と聞きたいのだろうが、クロウが何年も愛用していたハロゲンヒーターは最近になってぶっ壊れた。
だから家には暖房器具、というものは無い。
使い捨て懐炉も、使わないので買わない。
だから、家に体を温めるものといえば毛布くらいしかない。
「毛布で大丈夫だろ。」くどい、と思いつつ、同じ答えを繰り返した。
確かに寒いのは分からないでもないが無い物は無いのだ。
こればっかりは我慢してもらうしかない。
「えー!?本当になんか無いの?」
マゼンダが不満そうに口を膨らませ、クロウに反論する。
完全に冷たい視線がクロウに向けられる。
「あー、分かった分かった、ココアを作るからッ!」
たまらなくなったクロウは大きくため息をつき、起きて台所に向かった。
後ろからやったーという声が聞こえ、クロウは少し脱力してしまった。
台所に向かったクロウは、まず水をやかんに入れ、沸かす。
その間に粉末ココアを大匙2〜3杯ほど、コップに入れる。
お湯が沸いたらそのコップの中に沸いたお湯をいれ、スプーンでかき混ぜる。
(これで・・・・と)
クロウは普通のココアが完成して冷凍庫に向かった。
取り出したのはチョコアイス。
これを先ほどのココアの中にいれ、アイスがなくなるまでかき混ぜる。
「ほい、出来上がったよ」
10分経って、ココアの入ったコップをマゼンダの目の前に置いた。
ココアは、普通のココアと違い、チョコレートの成分が浮いている。
マゼンダは差し出された瞬間、少し顔を顰めた。
「これ本当に飲めるの?」
マゼンダが疑う。
まぁ見てくれが悪いので仕方がないちゃぁ仕方が無い。
ただ、味は保障できる。
これで何度冬を越したことか。
少し昔を思い出しながら、彼は反論した。
「いや、いいから飲んでみろよ。うまいから」
自身を持って言える。
少なくとも、これだけは。
その思いがマゼンダに通じたのか。マゼンダは一口すすった。
ゴクリ、とマゼンダの飲み込むが響く。
「あ・・・・おいしい」
マゼンダは予想を超えた味に、びっくりするとともに、少し笑った。
「そうだろう。俺が作ったんだから」
人が笑うと自分も幸せになるものだろうか。
クロウはマゼンダにつられて笑い、自分の分を作り始めた。
そのとき、2人のすんでいる部屋は暖房が無くても暖かかった。
あとがき
チョココアにまつわるSSをといわれ、書いてみました。
チョココアを作るコツはただ1つ、
チョコレートアイスを使うこと。
バニラにチョコをコーティングをしたものはだめです。
おいしいのでぜひやってみてください。