珍しい。
雪が降った。
ベットから起きて窓から景色を見たとき、ブルースはそう思った。
この地方に雪はほとんどない。
降るとしても2〜3年に一度位だろう。
寒くてまともに歩いていられないので、ベットにもぐりこんでブルースは部屋内の暖房をつけた。
ブゥーン・・・・・
静かな部屋に暖房の起動音が鳴る。
寒い。
それでも寒い。
ブルースは無駄に体力を使いたくないので、しばらくベットに潜るとした。
幸い、今日は休みである。
「あぁ暖かい暖かい・・・・・」
ブルースはコタツで丸まる猫のごとく、布団のなかで暖をとった。
ピンポーン
ちょっと時間がたったところでブルースにとってあんまりなってほしくない音がなった。
玄関の呼び鈴である。
どうせ新聞かなんかだろう。
(居留守居留守・・・・・)
ブルースは頭の中でそう呟きつつ、さらに布団の中で丸くなった。
ブルースはこれが願わくば永遠の時間にならんことを、と全知全能の神に願いつつ、布団の中で深呼吸するのであった。
ガラッ
突如響き渡る窓の開閉音
髪を三つ編みにした少女の声が響く
「ブルースッ、雪だよ!?これはもう遊ぶしかないでしょ!!!」
はぁ・・・・・
ブルースは少し絶望に浸った。
全知全能の神の気まぐれさもいい加減にしてほしいものである。
開いた窓からすー、と入ってくる風、雪
布団の中が天国から地獄に変わっていく様をブルースは身をもって感じた。
「あー分かったから、分かったからッ!!ちょっと着替えさせてくれッ!!」
ブルースは高速でベットから起き上がり、窓を閉めた。
その速さ、ジャスト5秒。
「・・・・はぁ」
ブルースは大きくため息をつくだけしかできなかった。
何でこんなタイミングでリンが俺の家に来るのか。
自分の運の悪さとリンの行動力に対し、ブルースはただただ、呪うしかなかった。
とりあえずトレーナーを着て、冬用外套を着、毛糸の帽子をかぶり、マフラー、手袋をして、どうにか家を出ることができた。
それでも、寒い。
完全装備のはずなのに、完全装備のはずなのにッ・・・・・
寒いのだ。
「やっほーッ、ブルース!!遊ぼうよ!!」
リンがブルースに詰め寄る。
彼女は冬用なのかよく分からない外套と耳当てのみである。
信じられん、とブルースは思う。
凍えるだろ。とツッコミたくてならない
自分がこの装備で家を出ろ、といわれたら10万と引き換えでも断る。
ブルースはただただ、「はは・・・・」と引きつったような笑うだけだった。
その後、ただ、ひたすら雪合戦だった。
「それーっ!」
そういって投げてくるリンのショットは正確である。
ブルースもがんばって抵抗するが、あっちは軽装、こっちは完全装備である。
はっきり言って無理がある。
それでも、ブルースはどんなに体が雪まみれになろうともがむしゃらに雪だまを投げ続けた。
ピシャッ!
「あうっ!」
突然の悲鳴。
ブルースの投げた雪だまが、リンの顔面にヒットしたのである。
リンはその場でうずくまり、当たった所を手で押さえる。
相当痛かったらしい。
「ごっ、ごめん・・・・・大丈夫?」
ブルースはリンのそばによった。
雪合戦とはいえ、ちょっとやりすぎたかもしれない。
ブルースは、がむしゃらになった自分が恥ずかしくなった。
「・・・・・ばか、手加減しなさいよ」
リンが少し涙声で言った。
あんただって手加減してないだろうが、という突っ込みは浮かばなかった。
ブルースはひたすらごめん、と謝った。
しんしんと雪の音が二人の間に響く。
「・・・・いいよ」
何度かブルースが謝った後、リンは言った。
ちょっと静かな声だったので、ブルースはいまだに許してもらえてるのだろうか、と不安になった。
「・・・・再開、する?」
ブルースは恐る恐る声をかけた。
もっと機転の利いたことはできないのか、とブルースはこういうときに思う。
自分の不器用さに少し、呪いたくなった。
「うんっ・・・・・!!」
少し無言の間が続き、リンはブルースに満面の笑顔を見せて答えた。
その笑顔を見て、ブルースのさっきの思いは霧のように消えた。
その後、暗くなるまでブルースとリンは寒さを忘れて雪合戦を続けた。
後書き
某Eさんからのリクエスト
東京は今年雪が降るのかなぁ・・・・と思って書きました。
11月なのにこの寒さだから今年は雪が降る気がしてなりません。
あ・・・・でも雪が降りすぎると部活ができなくなるなorz
ブルリンというとブルースがナイーブな感じがして、リンがそこ抜けて明るい感じがします。
そんなでこぼこが個人的には好きです。